ザイゴマインプラントは何年もつ?10年経過した症例でわかるインプラントと人工歯の変化
ザイゴマインプラントが何年もつかには個人差があり、一律に「何年」とは言えません。2013年に当院で治療したザイゴマインプラントの症例では、約10年たってもインプラントは当時のまま使えていた一方、人工歯はすり減りが進み作り替えています。長期経過からわかることと、長く使うためのポイントを解説します。
この記事の結論
ザイゴマインプラントが何年もつかには個人差があり、一律に「何年もつ」と言うことはできません。長期的には、頬骨に固定する「インプラント」と、毎日の食事で力を受ける「人工歯(上部構造)」を分けて考えることが大切です。
- 2013年に当院で治療したザイゴマインプラントの症例では、約10年たってもインプラントは当時のまま使えており、インプラント周囲炎も見られませんでした
- 一方、人工歯タイプの上部構造は大きくすり減り、2024年にジルコニアの上部構造へ作り替えています
- 人工歯タイプの上部構造は、当院の経験では長くても10年程度を目安に作り替えが必要になることが多くなります
- 長く使うためには、上部構造の材料選び、定期的なメンテナンス、毎日のセルフケアが欠かせません
「ザイゴマインプラントは特殊な治療だと聞くけれど、長く使えるの?」「10年後、20年後はどうなるの?」。高度な外科治療で費用もかかるからこそ、長期的な見通しを知りたい方は多いのではないでしょうか。
この記事では、当院の総院長・橋村が2013年に初めて担当したザイゴマインプラントの症例の約10年の経過をもとに、ザイゴマインプラントの「寿命」をどう考えればよいかを解説します。ご紹介するのは一つの症例の経過で、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。
ザイゴマインプラントは何年もつ?
何年使えるかは、骨や頬骨の状態、噛む力や噛み合わせ、喫煙、全身の健康状態、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスによって大きく変わるため、一律には決められません。
そのうえで考え方のポイントになるのが、治療を2つの部分に分けて見ることです。
| 部分 | ザイゴマインプラント・インプラント | 人工歯(上部構造) |
|---|---|---|
| 役割 | 頬骨や上顎の骨に固定して、人工歯を支える土台 | 実際に噛んだり話したりする「歯」の部分 |
| 起こりやすい変化 | インプラント周囲炎による骨の吸収 | すり減り、欠け、外れ、変色 |
| 長期的な対応 | 早期発見と治療。状態によっては入れ直し | 修理、または作り替え |
10年たったザイゴマインプラントはどうなった?当院の症例
治療前の状態と治療計画
2013年に治療を行った、橋村にとって最初のザイゴマインプラントを用いたオールオン4の症例です。患者様は喫煙歴があり、歯周病で歯ぐきに炎症が起き、歯がぐらぐらしている状態でした。レントゲンでは奥歯のまわりの骨が歯周病で溶けており、このままでは数年のうちに多くの歯がだめになってしまうと考えられる状況でした。
この方は、上顎の奥にある空洞「上顎洞」が前方に大きく張り出していました。通常のオールオン4を計画すると奥側のインプラントが上顎洞にかかってしまうため、上顎には頬骨に先端を固定するザイゴマインプラントを用いる計画にしました。下顎は通常のオールオン4です。
また、体格がよく噛む力も強いと考えられたため、上顎は前方に通常のインプラントを4本、奥側の左右にザイゴマインプラントを1本ずつ入れ、合計6本で人工歯を支える配置にしています。最終的な上部構造は、上下とも人工歯タイプを選ばれました。
約10年後:インプラントは当時のまま、人工歯はすり減り
治療から約10年たつと、人工歯タイプの上部構造には大きな劣化が見られました。人工歯が何度も外れたり欠けたりし、そのたびに修理をしながら使っていただいていた状況です。患者様はお仕事が忙しく通院の時間も限られていたため、応急的な修理を重ねていました。
2024年に上部構造をジルコニアに作り替えた際、取り外した上部構造を見ると、上顎の人工歯は半分以下の高さまですり減り、下顎の人工歯もすり減って平らになっていました。その分、噛み合わせの高さも低くなっていたと考えられます。
一方で、レントゲンで確認すると、ザイゴマインプラントを含むインプラントは治療当時のまま使用できており、上下ともインプラント周囲炎も見られませんでした。この症例では、約10年の経過で変化したのは主に人工歯タイプの上部構造だった、ということになります。
人工歯(上部構造)は何年で作り替える?
人工歯タイプの上部構造は、多くの患者様の経過を見てきた当院の経験では、長くても10年程度を目安に作り替えが必要になることが多くなります。まず奥歯の人工歯がすり減り、その結果、下の前歯で上の前歯の人工歯を強く噛むようになって、前歯の人工歯が欠けたり外れたりしやすくなる、という経過をたどることがあります。
ジルコニアは硬い材料のため、人工歯タイプと比べてすり減りにくく、人工歯が欠けたり外れたりするトラブルは起こりにくいと考えています。ただし、ジルコニアでも破損などのトラブルが起こる可能性はあり、噛み合わせや使い方によって経過は異なります。
当院独自の「二重冠」(特許取得済み)は、ジルコニアのフレームに歯を1本ずつ被せる構造のため、割れた歯だけを取り替えることができます。
ザイゴマインプラントを長持ちさせるには?
- 上部構造の材料を選ぶ:すり減りや破損のしにくさ、修理のしやすさも含めて、上部構造の材料と設計を選びます
- 定期的に通院する:インプラントのまわりの歯ぐきや骨、人工歯のすり減り・欠け、ネジの緩み、噛み合わせの変化を確認します。インプラント周囲炎は初期には自覚症状が少ないため、症状がなくても確認が大切です
- 毎日のセルフケア:人工歯と歯ぐきの境目や裏側を、歯ブラシと補助清掃用具で清掃します
- 力の管理:硬いものばかりを好んで噛む習慣を避け、歯ぎしり・食いしばりがある方はマウスピースなどで人工歯を守ります
- 禁煙:喫煙は歯ぐきの血流を悪くし、インプラント周囲炎のリスクを高めるといわれています
ザイゴマインプラント治療の注意点
ご紹介したのは一つの症例の経過であり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。インプラントや上部構造をどのくらいの期間使用できるかは、骨の状態、噛み合わせや噛む力、喫煙習慣、全身の健康状態、セルフケアやメンテナンスの状況などによって異なります。
ザイゴマインプラントは外科手術を伴う治療です。腫れ、痛み、出血、内出血、感染のほか、副鼻腔に関連する症状、知覚の変化、インプラント周囲の炎症、インプラントの脱落などが生じる可能性があります。公的医療保険が適用されない自由診療で、当院ではザイゴマインプラント1本あたり550,000円(税込)をオペ費用に追加します。総額は治療内容によって異なります。
よくある質問
ザイゴマインプラントは一生使えますか?
使用できる期間には個人差があるため、「一生使える」とお約束することはできません。インプラントは長く使える方が多い一方、人工歯は材料によって作り替えが必要になることがあります。長く使うためには、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスが欠かせません。
人工歯を作り替えるときは、また手術が必要ですか?
人工歯だけを作り替える場合は、インプラントを入れる手術は必要ありません。インプラント周囲炎などでインプラントを入れ直す場合は、外科手術が必要になります。
通常のインプラントより早くだめになりますか?
ザイゴマインプラントだから早くだめになる、ということではありません。当院の約10年の症例でも、インプラントは当時のまま使えていました。ただし、経過には個人差があり、骨の状態やメンテナンスの状況によって異なります。
他院で入れたザイゴマインプラントの人工歯を作り替えることはできますか?
ご相談いただけます。インプラントの種類や状態、骨の状態を確認したうえで、人工歯の作り替えや、必要に応じた再治療を検討します。
まとめ
ザイゴマインプラントが何年もつかは一律に決められませんが、インプラントと人工歯を分けて考えると、長期的に何が起こるかが見えてきます。当院の約10年の症例では、ザイゴマインプラントを含むインプラントは当時のまま使えていた一方、人工歯タイプの上部構造は作り替えが必要になりました。
「どのくらい使えるか知りたい」「上部構造の材料をどう選べばいいか」という方も、まずはご相談ください。
この症例の経過は、当院のYouTubeチャンネルの動画「【症例解説シリーズ】15年経った オールオン4 どうなってるの??」でも解説しています。
治療について
歯科治療の適応や治療方法、治療期間、費用、治療結果には個人差があります。実際の治療については、口腔内の状態を診査・診断したうえでご提案します。