15年たったオールオン4はどうなる?長期症例で見るインプラントと人工歯の変化

オールオン4は治療後10年、15年とたつとどうなるのでしょうか。総院長・橋村吾郎が初めて担当したオールオン4の約15年の経過と、ザイゴマインプラント症例の約10年の経過をもとに、インプラント体と上部構造それぞれに起こる変化や、長持ちさせるためのメンテナンスの大切さを解説します。

15年たったオールオン4はどうなる?長期症例で見るインプラントと人工歯の変化

オールオン4は、4本前後のインプラントで連結した人工歯を支える治療法です。費用も治療期間もかかる治療だからこそ、「10年、15年たったらどうなるのか」「どこが変化して、何をし直すことになるのか」が気になる方は多いのではないでしょうか。

この記事では、オールオン4クリニックのYouTubeチャンネルで公開している症例解説動画をもとに、総院長の橋村吾郎が初めて担当したオールオン4の症例(治療から約15年)と、初めて担当したザイゴマインプラントを用いたオールオン4の症例(治療から約10年)の経過をご紹介します。

ここでご紹介するのは、あくまで2つの症例の経過です。すべての方が同じ経過をたどるわけではなく、インプラントや人工歯がどのくらい長く使えるかは、お口の状態や噛み合わせ、全身の健康状態、日々のセルフケアや定期的なメンテナンスによって大きく変わります。長期的に何が起こり得るのか、歯科医師が何を確認しているのかを知っていただくための解説としてお読みください。

オールオン4は「インプラント体」と「上部構造」に分けて考える

オールオン4の長期経過を考えるうえで大切なのは、治療を2つの部分に分けて考えることです。ひとつは顎の骨に埋め込む「インプラント体」、もうひとつはその上に固定する人工の歯である「上部構造」です。

インプラント体は骨と結合して人工歯を支える土台です。一方、上部構造は毎日の食事で直接力を受けるため、使っている材料によっては、年数とともにすり減ったり、欠けたり、汚れが付きやすくなったりします。動画でも、長期経過では「インプラント体」と「上部構造」で変化の仕方が異なることが繰り返し説明されています。

当院では、インプラント体と上部構造について、それぞれ保証期間を分けて設定しています。ただし、保証期間は「その期間だけ使える」という意味ではなく、また保証期間を過ぎても使えることを約束するものでもありません。保証の内容や条件は、カウンセリングの際に個別にご説明しています。

症例1:約15年前に治療したオールオン4の経過

治療前の状態

1つ目の症例は、2009年に治療を行った、橋村にとって最初のオールオン4の症例です。来院当時、上顎は総入れ歯で、下顎も数本の歯が残っているだけの状態でした。入れ歯が動いてしまい、見た目にも日常生活にも支障が出ていたため、インプラント治療を希望されました。レントゲンでは、上顎に残っている2本の歯は歯として機能しておらず、下顎の歯も長くはもたないと判断されたため、上下ともにオールオン4による治療を選択しています。

動画では、このように歯を失っていく経過についても説明しています。歯周病などで奥歯から1本、2本と歯を失うと、奥で噛めなくなり、前歯で噛むようになります。すると下の前歯が上の前歯を突き上げるような噛み方になり、最終的に上顎が総入れ歯になって下の前歯だけが残る、という経過をたどる方が多いといいます。早い段階で、失った歯を適切に補う治療を受けておくことが大切だと考えています。

治療直後の上部構造

当時はまだ、現在当院でよく用いているフルジルコニアの上部構造がなかった時代です。この症例では、上顎は金属などの中の構造体(フレーム)にセラミックの歯を1本ずつセメントで接着する「二重構造」の上部構造、下顎はハイブリッドレジンという材料の歯を用いた上部構造を選択しました。人工の歯ぐきの部分は、ハイブリッドレジンを細かく盛り足して天然の歯ぐきに近い見た目を再現しています。

約15年前に治療した最初のオールオン4症例の治療直後のパノラマレントゲン。上顎は二重構造の上部構造(赤丸)、下顎は通常のオールオン4

上顎は、左上の奥のインプラントがやや手前の位置になったため、人工歯を奥に長く張り出させる(カンチレバーが長くなる)ことを避ける目的で、もう1本インプラントを追加し、5本で支える計画としています。下顎は通常のオールオン4です。オールオン4のインプラントは4本に限らず、骨の状態や力のかかり方に応じて本数を調整することがあります。

約9年後から15年まで:上部構造の劣化とインプラントの入れ直し

約9年後の上部構造の変化

定期的なメンテナンスを続けるなかで、治療から約9年後の2018年には、上部構造に変化が見られるようになりました。上顎の二重構造の上部構造では、歯を接着しているセメントが少しずつ溶け出す「ウォッシュアウト」が起こり、汚れが目立つようになっていました。

治療から約9年後(2018年)の口腔内写真。上部構造の劣化や汚れの付着が見られる

下顎のハイブリッドレジンの歯はすり減りが進み、中の金属の構造が見えてくる状態でした。患者様も口を開けたときの見た目を気にされるようになっていたため、「いずれ上下ともジルコニアの上部構造に作り替えましょう」とお話ししながら、10年、11年と経過を見ていきました。

このように、上部構造は材料によって経年変化の出方が異なります。すり減りや変色、汚れの付きやすさといった変化を早めに見つけるためにも、定期的なメンテナンスでの確認が欠かせません。

インプラント周囲炎への対応と再埋入

経過観察のなかで、下顎の右側のインプラントにインプラント周囲炎が見つかりました。インプラント周囲炎は、インプラントのまわりの歯ぐきや骨に炎症が起こる病気で、天然歯の歯周病に近いものです。

下顎右側のインプラントに起きたインプラント周囲炎の口腔内写真

このインプラントについても治療を行いましたが、インプラント周囲炎によって一度失われた骨は、元どおりに戻らないことが多いのが実情です。そこで、上部構造を作り替えるタイミングに合わせて、このインプラントを入れ直す計画を立てました。

2023年に、下顎右側のインプラントを除去して別の位置に新たにインプラントを入れ直し、あわせて上下の上部構造をフルジルコニアで作り直しています。上顎のインプラントは、2009年に入れたものをそのまま使用しています。

2023年のパノラマレントゲン。下顎右側のインプラント(赤丸)を入れ直し、上下の上部構造をフルジルコニアに作り替えた状態

オールオン4では、このように一部のインプラントに不具合が生じた場合でも、状態によっては、その部分のインプラントを入れ直して対応できることがあります。ただし、対応の可否や方法は骨の状態などによって異なります。

15年でどうなったのか

この症例の約15年の経過をまとめると、次のようになります。

  • 9本のインプラントのうち1本を、インプラント周囲炎のため入れ直した
  • 当初の上部構造は約14年間使用したが、見た目の変化や劣化が進んだため、フルジルコニアに作り替えた
  • そのほかのインプラントは、治療当時のものを継続して使用している

なぜ以前は上部構造の作り替えが前提だったのか

現在当院では、フルジルコニアの上部構造を多く用いていますが、2009〜2010年ごろには、オールオン4の上部構造としてフルジルコニアを選ぶことはできませんでした。

ジルコニアが日本で歯科材料として承認されたのは2005年です。当初のジルコニアは真っ白な色しかなく、そのままでは歯の見た目としては使いにくい材料でした。その後改良が進み、色に層のあるものや透明感のあるジルコニアが開発されたことで、現在のようにフルジルコニアの上部構造が選べるようになっています。

それ以前のオールオン4は、人工歯タイプや二重構造の上部構造が中心でした。そのため、当時のオールオン4は「インプラントは長く使っていただき、上部構造は10年前後を目安に作り替えていく」という考え方が前提になっていました。

症例2:約10年前に治療したザイゴマインプラント症例の経過

治療前の状態と治療計画

2つ目の症例は、2013年に治療を行った、橋村にとって最初のザイゴマインプラントを用いたオールオン4の症例です。患者様は喫煙歴があり、歯周病で歯ぐきに炎症が起き、歯がぐらぐらしている状態でした。レントゲンでは奥歯のまわりの骨が歯周病で溶けており、このままでは数年のうちに多くの歯がだめになってしまうと考えられる状況でした。

この方は、上顎の奥にある空洞「上顎洞(じょうがくどう)」が前方に大きく張り出していました。通常のオールオン4を計画すると、奥側のインプラントが上顎洞にかかってしまうため、上顎には頬骨(きょうこつ)に先端を固定する長いインプラント「ザイゴマインプラント」を用いる計画としました。ザイゴマインプラントは上顎の治療に用いるもので、下顎は通常のオールオン4で治療しています。

また、体格がよく噛む力も強いと考えられたため、上顎は前方に通常のインプラントを4本、奥側の左右にザイゴマインプラントを1本ずつ入れ、合計6本で人工歯を支える配置にしています。最終的な上部構造は、上下とも人工歯タイプを選択されました。

約10年前に治療したザイゴマインプラント症例の治療後のパノラマレントゲン。上顎は通常のインプラント4本とザイゴマインプラント2本、下顎は通常のオールオン4

約10年後:人工歯タイプの上部構造の変化

治療から約10年たつと、人工歯タイプの上部構造には大きな劣化が見られました。人工歯が何度も外れたり欠けたりし、そのたびに修理をしながら使っていただいていた状況です。患者様はお仕事が忙しく通院の時間も限られていたため、応急的な修理を重ねていました。

2024年に上部構造をジルコニアに作り替えた際、取り外した上部構造を見ると、上顎の人工歯は半分以下の高さまですり減り、レジンの部分も艶がなくなっていました。下顎の人工歯もすり減って平らになっており、その分、噛み合わせの高さも低くなっていたと考えられます。

約10年使用して取り外した人工歯タイプの上部構造(2024年)。人工歯のすり減りやレジン部分の劣化が見られる

動画では、人工歯タイプの上部構造に起こりやすい経過として、天然の歯が崩れていく経過と同じように、まず奥歯の人工歯がすり減り、その結果、下の前歯で上の前歯の人工歯を強く噛むようになって、前歯の人工歯が欠けたり外れたりしやすくなる、と説明しています。橋村の経験では、7〜8年ほどたつと上の前歯にトラブルを抱える方が増えてくる印象があるといいます。

この患者様は、新しい上部構造で少し歯並びを調整し、ジルコニアの上部構造に作り替えています。一方で、レントゲンで確認すると、インプラントは治療当時のまま使用できており、上下ともインプラント周囲炎も見られませんでした。この症例では、10年の経過で変化したのは主に人工歯タイプの上部構造だった、ということになります。

なお、ジルコニアは硬い材料のため、人工歯タイプと比べてすり減りにくく、人工歯が欠けたり外れたりするトラブルは起こりにくいと考えています。ただし、ジルコニアでも破損などのトラブルが起こる可能性はあり、噛み合わせや使い方によって経過は異なります。

長期経過から見えること:長持ちさせるためのポイント

2つの症例を通して、橋村は次のように説明しています。

  • インプラント体は、適切なメンテナンスを続けることで長期間使用できている方が多い
  • 一部のインプラントに不具合が起きた場合でも、状態によっては入れ直して対応できることがある
  • 人工歯タイプの上部構造は、多くの患者様の経過を見てきた経験から、長くても10年程度を目安に作り替えが必要になることが多い

オールオン4を長く使っていただくためのポイントとして、動画では次の点を挙げています。

  • 定期的に通院し、歯科医院でインプラントや上部構造の状態をチェックする
  • 毎日のセルフケアで、インプラントのまわりを清潔に保つ
  • 常に硬いものばかりを好んで噛むなど、上部構造に過度な負担がかかる習慣を避ける

定期的なメンテナンスでは、インプラントのまわりの歯ぐきや骨の状態、上部構造のすり減りや欠け、ネジのゆるみ、噛み合わせの変化などを確認します。インプラント周囲炎のように、自覚症状が出にくいトラブルを早めに見つけて対応するためにも、治療後の通院を続けていただくことが大切です。

オールオン4治療の注意点

今回ご紹介したのは2つの症例の経過であり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。インプラントや上部構造をどのくらいの期間使用できるかは、骨の状態、噛み合わせや噛む力、喫煙習慣、全身の健康状態、セルフケアやメンテナンスの状況などによって異なります。

オールオン4は外科手術を伴う治療です。手術後には腫れや痛み、出血が出ることがあり、感染が起こる可能性もあります。治療後も、インプラント周囲炎が起きたり、インプラントが骨と結合しなかったり、途中で脱落したりする場合があります。また、上部構造は材料によってすり減りや欠け、変色などの経年変化が起こるため、修理や作り直しが必要になることがあります。治療後は、インプラントと人工歯を長く使っていただくために、定期的なメンテナンスが欠かせません。

オールオン4は公的医療保険が適用されない自由診療です。治療費や治療期間は、お口の状態や治療内容、選択する上部構造の材料によって異なります。

まとめ

約15年の症例では、9本のうち1本のインプラントを入れ直し、上部構造は約14年使用したのちにフルジルコニアへ作り替えました。約10年のザイゴマインプラントの症例では、インプラントは当時のまま使用できている一方、人工歯タイプの上部構造はすり減りが進み、ジルコニアに作り替えています。

オールオン4の長期経過では、インプラント体と上部構造で変化の仕方が異なります。上部構造の材料選びや、治療後の定期的なメンテナンス、日々のセルフケアが、長く使っていただくための大切なポイントになります。

動画の内容は、こちらからご覧いただけます。

動画を見る:【症例解説シリーズ】15年経った オールオン4 どうなってるの??(YouTube)

※本記事は動画の内容をもとに作成しています。治療方法やメンテナンス、費用、保証などの運用は、動画の公開当時から変更している場合があります。最新の内容はカウンセリングの際にご確認ください。

ご自身のお口の状態でオールオン4が適しているかどうか、どのような上部構造が考えられるかは、歯科医師の診査・診断によって判断します。治療後の経過やメンテナンスについて気になる方も、まずはお気軽にご相談ください。

治療について

歯科治療の適応や治療方法、治療期間、費用、治療結果には個人差があります。実際の治療については、口腔内の状態を診査・診断したうえでご提案します。

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