オールオン4のインプラントがぐらつく原因と対処|症例から解説

オールオン4のインプラントは、骨としっかり結合していれば動くことはありません。しかし、インプラント周囲炎などで骨の支えが失われると、人工歯ごとぐらつくことがあります。治療から約12〜13年後にぐらつきを感じて来院された方の症例をもとに、ぐらつきの原因、気をつけたいサイン、検査と治療の選択肢、治療を選ぶときのポイントを解説します。

オールオン4のインプラントがぐらつく原因と対処|症例から解説

オールオン4は、歯を多く失った方や総入れ歯の方に向けて、4本を基本とするインプラントで連結した人工歯を支える治療法です。インプラントが骨としっかり結合していれば、人工歯は固定されていて動きません。しかし、何らかの原因でインプラントを支える骨が失われると、人工歯ごとぐらつくようになることがあります。

この記事では、オールオン4クリニックのYouTubeチャンネルで総院長の橋村が解説した症例をもとに、オールオン4のインプラントがぐらつく原因や、気をつけたいサイン、ぐらつきに気づいたときの検査と治療の選択肢、治療を選ぶときに確認しておきたいポイントをお伝えします。

インプラントがぐらつくのはどのような状態か

動画で紹介しているのは、約12〜13年前にオールオン4の治療を受け、「左側がグラグラするのが気になる」というご相談で、セカンドオピニオンとして当院に来院された患者様です。

お口の中を拝見すると、人工歯タイプの上部構造(インプラントに固定する歯の部分)が使われており、年数の経過とともに汚れや材料の劣化が見られました。また、右上のインプラントが内側(舌側)に寄った位置にあり、舌が当たって話しにくさにつながりやすい状態でした。

初診時の口腔内写真。上下のオールオン4の上部構造を正面・側方・咬合面から撮影したもの

実際に人工歯に指を当てて確認すると、噛む力をかけたときに歯ごと動いてしまう状態でした。本来、オールオン4の上部構造はインプラントにしっかり支えられていて、動くことはありません。人工歯全体が動くということは、インプラントが骨と結合していない、つまり骨による支えが失われていることを示しています。

グローブをした指で上の人工歯を動かし、ぐらつきの程度を確認している様子

レントゲン・CTで分かること

当院では、初診時にパノラマレントゲンとCTを撮影し、骨やインプラントの状態を確認します。この患者様のパノラマレントゲンでは、上顎のインプラントの周りの骨がインプラント周囲炎によって大きく失われていることが分かりました。患者様ご自身は「なんとなくグラグラする」という感覚だったそうですが、画像で見ると、上下ともインプラントを支える骨がかなり少なくなっていました。

さらに下顎では、奥に入っていたはずの左右のインプラントがすでに失われており、骨にその跡が残っていました。患者様はこのとき初めて、そのことに気づかれたそうです。

初診時のパノラマレントゲン写真。上下にオールオン4のインプラントと上部構造が写っている

CTを立体的に再構成した画像で確認すると、状態はより詳しく分かります。右上の1本は先端付近でかろうじて骨と結合していたものの、それ以外の上顎のインプラントは周囲の骨が吸収し、歯ぐきでかろうじて保たれているような状態でした。下顎の前方の2本も、先端の5mmほどしか骨に埋まっておらず、この2本で下の歯をかろうじて支えている状態でした。

初診時のCT画像。顎の骨を立体化した画像と、インプラント周囲の骨の断面画像

このように、ぐらつきの原因や程度は、お口の中を見るだけでは分からないことも多く、CTによる立体的な確認が大切です。

オールオン4のインプラントがぐらつく主な原因

オールオン4は、適切な計画と管理のもとで行えば、長く使っていただくことを目指せる治療です。一方で、いくつかの要因が重なると、インプラントを支える骨が失われ、ぐらつきにつながることがあります。今回の症例の画像から考えられる要因を中心に、代表的なものをご紹介します。

インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラントの周りの歯ぐきや骨に細菌による炎症が起こり、骨が少しずつ溶けていく病気です。初期は痛みなどの自覚症状が少なく、気づかないうちに進行することがあります。進行すると骨による支えが失われ、インプラントがぐらついたり、抜け落ちたりする原因になります。

清掃しにくい上部構造の形

上部構造の裏側(歯ぐきに接する面)の形も、インプラント周囲炎のなりやすさに関わります。今回の症例では、取り外した上部構造の裏側が大きくくぼんだ形(鞍状型)になっており、患者様ご自身では汚れを落とすことが難しい形状でした。汚れがたまりやすい形だと、毎日のセルフケアを丁寧に行っていても、炎症が起こりやすくなります。

取り外した上部構造の裏側。歯ぐきに接する面がくぼんだ形になっている

インプラントの位置・深さと骨の幅

インプラントを埋め込む深さが浅すぎたり、骨の幅が足りない部分に埋め込まれていたりすると、周囲の骨が吸収しやすくなります。一般的に、インプラントの上部の表側には2mm以上の骨の厚みがあることが望ましいとされています。また上顎では、鼻の下にある硬い骨(鼻腔底)などを利用して、インプラントの支えを得る方法もあります。

インプラントの傾斜・長さとカンチレバー

オールオン4では、奥側のインプラントを斜めに埋め込むことで、少ない本数で広い範囲の歯を支えます。ただし、インプラントは垂直方向の力には強い一方で、横方向に揺さぶられる力には弱いという特徴があります。傾斜が強すぎると、噛む力が横方向の負担として骨にかかりやすくなります。

また、奥側の傾斜したインプラントは15mm以上の長さが望ましいとされており、今回の症例では10mm程度のインプラントが使われていました。さらに、一番奥のインプラントより後ろに張り出した人工歯の部分(カンチレバー)が長すぎると、インプラントに大きな負担がかかります。上顎の場合、張り出しの目安はおよそ10mm、歯1本分程度とされています。今回の症例では、前方に残った狭い範囲の骨に4本が入っており、張り出しが大きくなっていました。

CT画像上で傾斜して埋め込まれたインプラントの角度と長さを確認している様子

オールオン4については、2014年ごろにはすでに国際的なコンセンサス(専門家による合意)が示されており、インプラントの位置や本数、傾斜、カンチレバーの長さなどについての考え方が整理されています。こうした原則に沿って治療計画を立てることが、長く使っていただくための土台になります。

見逃したくないぐらつきのサイン

インプラント周囲炎は、初期には自覚症状が少ないことが特徴です。次のようなサインがあるときは、早めに歯科医院で確認を受けることをおすすめします。

  • 噛んだときに、人工歯全体がわずかに動く感じがある
  • インプラントの周りの歯ぐきが腫れている、出血しやすい
  • 歯ぐきから膿が出る、口の中に嫌な味やにおいがある
  • 以前より歯ぐきが下がり、金属部分が見えるようになった
  • 噛み合わせや話しやすさに、以前と違う違和感がある

オールオン4の上部構造は複数のインプラントで連結されているため、1本の支えが失われても、すぐには動きとして感じにくいことがあります。症状がない場合でも、定期的なメンテナンスと画像による確認が大切です。

ぐらつきに気づいたときの検査と治療の選択肢

インプラントのぐらつきが気になる場合は、まず原因と状態を詳しく調べることから始めます。当院では、次のような検査を行います。

  • お口の中の診察(歯ぐきの状態、出血や膿の有無、人工歯の動き)
  • パノラマレントゲンとCTによる、インプラント周囲の骨の状態の確認
  • 上部構造を取り外して、裏側の形や汚れ、インプラントとの接続部の確認
  • 噛み合わせや、インプラントにかかっている力の確認

検査の結果によって、治療の考え方は異なります。インプラント周囲炎が初期の段階であれば、インプラント周囲の清掃や炎症に対する治療、上部構造の形の調整などを検討します。骨の吸収が大きく進み、インプラントが骨と結合していない場合には、インプラントを取り除いて炎症を落ち着かせ、骨の状態を見ながらインプラントを埋め込み直す再治療を検討することになります。

今回の患者様は、当院での再治療を希望され、インプラントを取り除いて清掃したうえで、改めてインプラントを埋め込む治療を行いました。再治療の内容については、続編の動画で解説する予定です。どの方法が適しているかは、骨の量や全身の健康状態、ご希望などによって一人ひとり異なります。

オールオン4の治療を選ぶときに確認したいこと

オールオン4は、手術をして終わりではなく、その後の長い期間にわたって使っていただく治療です。治療を検討する際には、次のような点を確認しておくことをおすすめします。

  • CTによる診断をもとに、インプラントの位置・角度・長さを計画しているか
  • 上部構造の裏側が、清掃しやすい形に設計されているか
  • 歯科医師と歯科技工士などがチームで治療計画を立てているか
  • 治療後の定期メンテナンスの頻度や、画像による確認の体制があるか
  • 保証の期間や内容、保証の条件について説明があるか
  • 治療のリスクや、トラブルが起きたときの対応について説明があるか

当院では、治療後は少なくとも半年に1回のメンテナンスにお越しいただき、1年に1回を目安にCTを撮影して、インプラント周囲の骨の状態を確認しています。インプラント周囲炎の兆候が見られた場合には、早い段階での治療をご提案します。

フルアーチのインプラント治療は、お口全体に関わる大きな治療です。治療方針に迷われる場合や、説明について不安がある場合には、セカンドオピニオンを受けることも選択肢のひとつです。ご自身が納得したうえで治療を受けていただくことが大切だと、私たちは考えています。

オールオン4治療の注意点

オールオン4は外科手術を伴う治療です。手術後に腫れや痛み、出血が出ることがあるほか、感染が起こる可能性もあります。また、治療後にインプラント周囲炎が起こることや、インプラントが骨と結合しない、あるいは結合が失われることもあります。インプラントの再治療も外科手術を伴い、同様のリスクがあります。

インプラントと人工歯を長く使っていただくためには、毎日のセルフケアに加えて、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。骨の量や全身の健康状態によっては、治療計画の変更や別の治療法をご提案することがあります。

オールオン4は公的医療保険が適用されない自由診療です。治療費や治療期間は、お口の状態や治療内容によって異なり、治療の経過や結果にも個人差があります。

まとめ

オールオン4のインプラントがぐらつく背景には、インプラント周囲炎による骨の吸収があることが多く、その起こりやすさには、インプラントの位置や深さ、傾斜や長さ、カンチレバーの長さ、上部構造の清掃しやすさ、メンテナンスの体制など、さまざまな要因が関わります。

ぐらつきや歯ぐきの腫れなどのサインに気づいたら、早めにレントゲンやCTで状態を確認することが大切です。また、これから治療を検討される方は、治療計画や設計、メンテナンス体制、保証やリスクの説明について、事前に確認しておくことをおすすめします。

動画の内容は、こちらからご覧いただけます。

動画を見る:オールオン4インプラントがぐらつく症例の解説(YouTube)

※本記事は動画の内容をもとに作成しています。治療方法やメンテナンス、費用、保証などの運用は、動画の公開当時から変更している場合があります。最新の内容はカウンセリングの際にご確認ください。

ご自身のお口の状態でどのような治療が適しているかは、歯科医師の診査・診断によって判断します。インプラントのぐらつきが気になる方や、オールオン4を検討されている方は、まずはお気軽にご相談ください。

治療について

歯科治療の適応や治療方法、治療期間、費用、治療結果には個人差があります。実際の治療については、口腔内の状態を診査・診断したうえでご提案します。

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